〜ほぞ組み〜 100年使える家具目指す


端っこを波打たせた形に彫り込んだ一枚板のの大テーブルの前に座る西田さん

 波打ったテーブルや丸いチェスト、揺れるタンス。家具職人西田政義さん(55)=大川市=の工房には一風変わったデザインの家具が並ぶ。「人が作らない家具を作りたい。デザインが面白いと、座ってただお茶を飲むだけでも楽しい気分になるでしょ」と西田さん。

 金属ならば容易なカーブも、木は削りだして作る。出来上がりの大きさが元の半分になることもある。「材料がもったいないと言う人もいるが、少し余計に削っても見た目が楽しいならいい」と笑う。

 多久市で小中学校時代を過ごした。幼いころから手先が器用で、人や動物などの木像を彫って遊んでいたという。中学卒業後、家具職人を目指し大川へ。当時はまだ弟子制度があり、タンスを何棹(さお)作ったかで職人の給料が決まる時代。流れ作業ではなく、一人の職人が最初から最後まで責任を持って作っていた。「今の家具は使い捨てのようなもの」。西田さんは百年使える家具を目指す。

■念願の創作家具

テーブルの天板にほぞ穴を作る。堅い材を使うため、ノミを打つ手に力がこもる。丁寧な手仕事も完成すれば隠れてしまう

 最初の店で五年間きっちりと基礎を学んだ。技術の幅を広げるため、ほかの店も二、三軒経験し、一九七五年「西田家具製作所」として独立した。一九九二年「家具工房・西田」に改め、念願の創作家具に力を入れ始めた。

 西田さんの作る家具は釘(くぎ)が一本も使われていない。木の凹凸で組み合わせる「ほぞ組み」と木釘を使う「ダボ継ぎ」で接合されている。引き出しなど細部もほぞで組まれている。テーブルでは天板の大きさから接合部分が隠れる長さを測り、凹凸の数を決める。機械で粗彫りをし、手作業で細部を形成する。

 ほぞは「紙一枚ほどの差で組みが甘くなったり堅くなったりする」と言う。凹凸の数が多ければ強度が増すが、その分手間がかかる。形も、組み合わさる部分が細くなった台形にすれば強度が増すが、高い技術が必要となる。見えない部分にこそ、職人の資質と技術が問われるのだ。西田さんの作品はデザインばかりに目がいきがちだが、隠れた接合部分こそ細やかな手仕事が施されている。

西田さん愛用の道具。曲線の作品が多いため、刃の丸いノミなど独自のものもある

 西田さんはタモ、ナラ、サクラなどを好んで使う。「傷が付きにくく、たとえ付いても傷が絵になる材」だからだ。堅く、手作業には向かないが頑丈さには換えられない。ほぞ組みも「一度組んだら子どもがぶら下がっても折れない」と太鼓判を押す。「いつ壊れるかびくびくしながらお客さんに渡すのはいや。自分が生きてる間は手直しも修理も無料でやります」。もっとも作りの悪さから来る修理は今まで一度もない。

■職人のこだわり

 「今は食うためでなく、好きな家具が作れて楽しいばかり」と笑う。そこにあるだけで楽しませるデザインでありながら、使う側の立場で考え、頑丈に組まれた家具。笑顔の裏には職人のこだわりが見え隠れする。
(文・田中敬子 写真・中島克彦)


=メモ= 〈ほぞ〉

 ほぞとは、木材などを接合するときに一方の材に開けた穴にはめ込むため、他方の材に一端につくった突起のこと。柱や建具の接合に用いられる。重ねほぞや二枚ほぞなどがあり、形で強度が変わる。台形のほぞは蟻(あり)ほぞと呼ばれ引っ張りの力に強い。

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