〜フラワー装飾〜 生活場面を豊かに演出
球形の吸水スポンジに、三種類の葉を手際よく差し、土台を整える。冷蔵ショーケースで出番を待つあでやかな花々に目をやり、客の要望に合った素材を選び出した。軽妙な語り口から言葉が消え、真剣な表情でじっと花を見つめる。 佐賀市で花店を営む末次栄蔵さん(54)。フローリストナイフを巧みに操り、淡い黄色のガーベラや青紫のリンドウなど季節の花々を組み合わせていく。次第にウエディングブーケの全容が見え、華やかな空間へと変わった。「二度と同じものはできない。作品の命は短くて絶対残らないのがフラワーデザイン(装飾)」と笑みを浮かべた。 いろいろな生活の場面を豊かに演出するフラワーデザイン。花束から結婚式をはじめパーティー会場やウインドウディスプレー、家庭のテーブルまで彩る。 ■おけとはさみ
末次さんの花との出合いは故郷での職探しだった。高校卒業後、東京で営業マンやアルバイト生活を経て、佐賀へ戻ってきた。本屋で手にした本に「花店はおけとはさみと仕入れ資金があればできる」という下りが目にとまった。「植物が好きだったから」と花店の道へ足を踏み込んだ。 福岡で見習い修業をして二十五歳で開業。「一人前の気持ちになっていた」が、花き装飾技術を競う九州大会に出場し、実力を思い知らされた。土台のスポンジが割れ、花を飾ることさえできなかった。「とにかくショックだった」。 「当時、佐賀は九州で最低レベルだった」。佐賀花商組合青年部で呼びかけ、勉強会を毎月開いた。専門家の指導を受け、仲間との切磋琢磨(せっさたくま)で実力をつけていった。 一九八三年、フラワー装飾の一級技能士の資格が誕生すると、初の検定試験に挑戦して合格した。八九年の九州大会では二位となり、県内から初めて全国大会への扉を開いた。その後は後輩育成に力を注ぎ、佐賀勢は九州でトップレベルの実力に成長した。 ■花と話 基本技術と感性。そしてそのときの気持ちのありようが作品の出来を左右する。「花と話をしながら作る。気分が乗らないときは、花が言うことを聞いてくれません」 輸入で花の種類も増加。フラワーデザインの流行もめまぐるしく変わる。「流行についていくのが大変。業界の流行と、客の流行とがマッチしているのか問いかけながら作っている」。ニーズに合った創造性を追求する。
末次さんは昨年、県が認定する「佐賀マイスター」の一人に選ばれた。小学校などのフラワーアレンジ教室や県主催のイベントでその腕を披露する機会が増えた。「花店のステータスを上げるために、少しでも貢献できれば」。会場で出会う人たちにフラワーデザインの魅力を伝えている。 =メモ= 〈フラワー装飾技能士〉 労働省(当時)の国家資格として一九八三年に制定された。切り花など生花を素材として結婚式披露宴やパーティー会場の飾り付けをする技能資格。検定試験は毎年一回行われ、デザインプランの立案や装飾品の製作などの実技と学科がある。県職業能力開発協会によると、県内では一級技能士が今年三人合格して計五十人に。二級は百三人が取得している。
|