夏の賑わいはすっかり消え、「ザザー、ザザー」と寄せてはかえす波の音だけが響いてくる唐津市東の浜の海岸通り。そこに今でも暑い夏が続いているかのようなカラフルな建物がある。九州を代表するサーファー・西村栄治さん(44歳)が経営する西村セーブザアース。サーフショップに加え一般廃棄物回収業、そして天ぷらなどで使用した廃食用油をリサイクルし、バイオディーゼル燃料(BDF)に精製する工場を持つ。
BDFとは軽油の代替燃料で、ディーゼルエンジンの自動車などに使用される。軽油と比べると酸性雨の原因となる硫黄酸化物がほとんど発生せず、二酸化炭素が減少するなど、今注目を浴びるエコ燃料だ。
西村さんがBDF精製に取り組んだのは4年前。父親が長年続けてきた一般廃棄物処理業を手伝い始めたころだった。かつて自分が飲食店を経営している頃には気にもとめなかったが、廃食用油の多さに驚いた。「どうにか再利用できないものか」。そんなとき、テレビでBDFの存在を知った。すぐに京都など、県外でBDF精製を始めていた企業などの視察をし、精製機を購入した。
「排気ガスのにおいをかいでみて。色もにおいも違うでしょう」と西村さん。煙からでてくる黒煙の量も少なく、どことなく天ぷらのにおいがした。一般的にBDF燃料の場合、軽油と比較して、黒煙の発生量が3分の1以下に軽減されるといわれている。
現在、西村さんは唐津市だけでなく佐賀市内、福岡県などの飲食店からも廃食用油を回収している。その量は月に約1万3000リットル。ドラム缶65本分だ。回収した油の状態にもよるが、廃油100リットルから90リットル以上のBDFが精製可能。自社のゴミ回収車やトラックは全てBDFでまかなっている。
価格も軽油より安価なため、2年前からは企業10社への販売も始めた。車の改造など、特別なことは何も必要とせず、ただ燃料を変えるだけで環境に配慮できる点も好評を得ている。
もちろん家庭の廃食用油からもBDFの精製は可能。ただ、個人で廃食用油を提供してくれる人はまだまだ少ないという。全国油脂事業協同組合連合会の推計によると、年間の廃油発生量は約40万トン。そのうち14万トンが一般家庭から発生するが、その9割は破棄されている。台所から流せば環境汚染の原因となり、固めて捨てればただのゴミ。しかし、ダンボールや新聞紙のように集めてリサイクルすれば立派な資源として再利用できる。
「捨てずに集めるだけの、個人でも簡単にできるエコ活動。廃食用油はリサイクルするのが当然という意識が芽生えるだけで、環境問題が改善される」。サーファーである西村さんにとって、青く美しい唐津の海は宝物。それを守るために、きょうもBDFを満タンにして車を走らせる。
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廃食用油から精製された、琥珀色のBDF。
100リットルを精製するのに、約6時間かかる。
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